中南米文学動向

このブログ記事は面白かったです。

マリオ・バルガス=リョサと2人の日系人 / スペイン情報誌 acueducto. La revista espa?ola en Jap?n
思いもかけない形でバルガス=リョサの人生に日系人が大きく関わることになったわけだが、日系人ということで想起されるのは、初期の代表作『緑の家』に主人公の1人として登場するフシーアである。ブラジルの刑務所を脱獄してペルーの密林地帯に逃げ延びてきたこの野心的な男は、インディオを手下に従えてのし上がっていくが、最後は病に体の自由を奪われ不本意な晩年を送ることになる。小説のもう一方の主人公で、ピウラという町を大きく変貌させるアンセルモが安らかな最期を迎えるのとは対照的で、2人のコントラストは読者の心に強い印象を残さずにはおかない。フシーアのモデルになったフアン・土屋という日系人の存在をバルガス=リョサが知ったのは、学生時代に先住民調査団の一員として初めてペルー北部の密林地帯に足を踏み入れたときのことであった。  

未開のジャングルで好戦的部族のボスとして君臨している日系人の存在が、作家としての想像力を強く刺激し、『緑の家』という傑作の誕生に重要な役割を果たした一方で、もう1人の日系人は彼から、手に入れかけていた大統領の座を奪うことで、作家という彼の天職を守ってくれた。今回の来日がキャンセルされなかった背景には、そうした日本との関わりに対する何か特別な思いが作用していたのではないか、という気がしてならない。

立林 良一


<偽りの人生> 双子の兄を殺しなりすました弟!もう一人の人生は本物だったか…脚本混乱で分かりにくさ残念 : J-CASTテレビウォッチ
一卵性双生児とはいえ、兄弟がまるまる入れ替わることなど不可能だが、不思議と設定をすんなり受け入れてしまう。それは、一人二役を演じたヴィゴ・モーテンセンの洗練された芝居の巧さだけではなく、キローガやガルシア・マルケスを生んだ南米文学が潜在的に持つ境界を超越した非規則的な世界(土地)が、映画の全体をメタファーで形成し物理的な不可解を呑み込んでいるからだろう。


ガルシア・マルケス氏が認知症か 中南米文学の代表作家 - 47NEWS(よんななニュース)
中南米文学を代表するコロンビアのノーベル賞作家、ガルシア・マルケス氏(85)が認知症を患っていると同氏の親友の作家が明らかにした。同氏が住むメキシコなどのメディアが11日までに伝えた。  
親友のコロンビア人作家によると、同氏は友人らを認識できなくなっており、過去5年間、電話で話していないという。同氏は1999年に患ったリンパ腫を克服した後、2004年に10年ぶりの新作を発表して以来、新作を出版していない。  
マルケス氏は67年発表の長編「百年の孤独」などで中南米文学の旗手と呼ばれるようになり、82年にノーベル文学賞を受賞した。
2012/06/11 22:35 【共同通信】


出版:寺尾隆吉さん、『魔術的リアリズム』を− 毎日jp(毎日新聞)
ラテンアメリカ文学の研究・翻訳を手がけるフェリス女学院大の寺尾隆吉准教授が、『魔術的リアリズム 20世紀のラテンアメリカ小説』(水声社、2625円)を著した。中国人作家の莫言(ばくげん)さんが今年のノーベル文学賞に選ばれた際、作風の紹介にも用いられた「魔術的リアリズム」。ラテンアメリカ文学と密接なつながりをもつこの手法は、多用される割には理解しづらい概念だ。「映画の宣伝や本の帯にもよく使われますが、しっかり書いた本がない。きちんと定義する必要があると感じていました」  

土着的な視点を取り込んだ空想世界を構築することで、現実を新しい目で捉え直し、社会変革を促す??。本書で意味づけられる「魔術的リアリズム」は、こうなるだろうか。背景には、独裁や内戦など社会的、政治的な課題がある。「作家たちは意識していなかったと思いますが、社会変革と文学は連動できる、という夢を目指して創作した結果だと思います」  

1930年代から活躍したキューバの作家カルペンティエールに始まり、ボルヘス、ガルシア・マルケス、アジェンデ、バルガス・リョサらを、一つの切り口から鮮やかに論じる。「予想もしなかったことが起きる。奔放な世界を体験してほしいですね」


新世紀・世界文学ナビ:スペイン語圏/28 脱ラテンアメリカ主義=ナビゲーター・野谷文昭− 毎日jp(毎日新聞)
ラテンアメリカの場合は19世紀末の詩の刷新運動<モデルニスモ>が有名だが、後にネルーダやO・パスらノーベル賞詩人を生む30年代の<前衛詩>の運動という呼び名は個性が無さすぎて、それだけでは何だか分からないかもしれない。その意味では60年代の<ブーム>世代や、そこで試みられたことを繰り返している<ブーメラン>世代というのも同様に漠然とした呼び名なのだが、前者はコルタサル、ガルシア=マルケス、フエンテス、バルガス=リョサの4人を中心にしていることや実際に起きた世界的現象を言い表していることもあり、嫌う作家がいながらも、今では研究者も使っている。  

しかし、下の世代にとってそれは抑圧的なものでもある。<ブーム>世代とは一線を画そうということから、メキシコのホルヘ・ボルピのように断裂音を表す<クラック>を世代の名前に使う作家も現われた。たしかに世界は変わった。冷戦が終わり、グローバル化が進み、何年か前に、インターネットを習っている最中だと言っていたポニアトウスカが今はそれを使いこなしている。


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